2014年1月30日 朝日小学生新聞

色 見分けやすく 色覚の違い 色使いなどで対応



 印刷物などにできるだけ多くの人が見分けやすい色を使う「カラーユニバーサルデザイン(CUD)」という考え方が広がっています。スマートフォン向けゲームアプリ「パズル&ドラゴンズ(パズドラ)」には、23日から「色覚サポート機能」がつきました。皆さんが使う教科書にもいろいろな工夫があります。(寺村貴彰)

ゲームにもサポート機能

 赤と緑が同じ色に見える、水色とピンクの差がわからないなど、色の見分けがつきにくい人がいます。
 目の奥には赤、緑、青の光に反応する細胞があります。この情報が脳に伝わって「色」を認識します。しかし、この3種類の細胞がどれか一つでも欠けたり、性質が異なったりすると、色の見え方がふつうと少しだけちがってしまうのです。日本人では、男の子の20人に1人、女の子の500人に1人の割合でみられるといわれます。ほとんどが生まれつきですが、病気がきっかけでなる場合もあります。
 パズドラは赤、緑、青、紫、黄の5色のブロックを組み合わせるなどして遊ぶゲーム。ゲームをつくったガンホー・オンライン・エンターテイメントは、この5色が見分けにくい人のために色覚サポート機能をつけました。この機能を使うと、ブロックを色や濃さで見分けやすい画面に切り替わります。
 ゲーム雑誌「ファミ通」を発行するKADOKAWA常務の浜村弘一さんは「ここ2、3年で、色への配慮がゲーム業界でも進み始めましたが、パズドラほど大々的なものは初めてかもしれない」と語ります。
 今後、色に配慮した作品は「技術的には難しくないので増えていくと思います」

教科書には工夫がたくさん

 「色覚のちがいは病気ではない」と話すのは、企業が出す書類などをチェックして、色による情報の差をなくそうと活動するカラーユニバーサルデザイン機構(CUDO)の伊賀公一さんです。人によって身長や体重がちがうように「人間の多様性の一つ」と強調します。
 色が見分けにくい人のために、最初から「だれにでも正しい情報が伝わるデザインにすればよい」という考え方が生まれました。これがCUDです。みなさんが使う教科書の多くが、この考え方のもと作られています。
 教科書は、2002年ごろから急速にカラー化が進みました。学校で教える内容の基準となる「学習指導要領」が変わり、学習効果を高めようと、写真や図を多く使うようにしたからです。
 教科書会社の教育出版は09年に「CUD推進室」を立ち上げ、本の色づかいやデザイン面にも工夫をこらしています。
 例えば色づかいでは、見分けにくい色を同時に使うのをさけたり、色の濃さを変えたりしています=イラストを見てね。
グラフや図は、線の太さや形を変え、図にマークをつけることもあります。円グラフは、となり合う要素の間を、はっきりとした線で区切ります。
 こうした配慮が生まれる理由を、事業開発局長の吉田利明さんは「だれもが等しい教育を受けなくてはいけません。すべての人が不便に感じない教科書づくりが求められています」と話します。
 身の回りでは信号機にも色を見分けやすいLEDが使われています。伊賀さんは「色は情報を早く得るための大切な手段の一つ。少し工夫するだけで、より多くの人が生活しやすい社会になることを知ってほしい」と話します。