色覚異常の子どもの2人に1人が異常に気づかぬまま、進学・就職時期を迎え、6人に1人が、進路の断念などのトラブルを経験していることが、日本眼科医会の調査で分かった。学校での検査は10年前に中止された。幼児期や小学校で周囲の理解不足に悩むなどの例も相次いでいた。同会は、希望者は学校で検査できるよう国に求めることを決めた。
生まれつきの色覚異常は男性の20人に1人、女性の500人に1人の割合で見られる。小学4年を対象に全国で色覚検査が行われてきたが、2003年度に中止。検査が社会的な差別にもつながりかねず、以上があっても生活に支障がない人が多いことが理由だ。
国は01年の労働安全衛生規則の改正で、雇用者が色覚検査を行う義務を撤廃。色覚異常があるだけで、採用を制限しないよう指導してきた。だが、航空や写真関係、食品関係の一部、警察官などの公務員では、色の識別が難しいと職務に支障が出ることを理由に現在も制限されている。
同会は10〜11年度に全国の眼科診療所の協力を得て、色覚異常のある941人を対象に聞き取り調査した。学校での色覚検査が中止された以降に、小学4年になった中高生185人の45%が進学・就職のための検診や眼科受診時まで本人や家族が色覚異常に気づいていなかった。また、13〜18歳の6人に1人(16%)にあたる47人が、進学・就職時に指摘されて、進路を断念したり、不安を抱いたりしていた。このほか、学校で教師ら周囲の無理解に当惑したり、授業に支障が出たりする例も相次いでいた。
希望者に検査 提案
調査結果を受け、同会は、希望者には、小学校低学年と、進学や就職を控えた中学1〜2年に検査を行うのが望ましいとの見解をまとめた。学校が保護者に十分に説明し、理解を得た上で希望者のみに行なうことを提案している。近く、文部科学省に申し入れる。
眼科医会理事の宮浦徹医師は「教育現場で患者への理解や対応が不十分になっていると感じる。早期に気づけば、子どもにも利点は大きい」と話す。(今直也)
■色覚異常に関連するトラブルの例