2019年7月20日 朝日新聞

サイエンス on Saturday ののちゃんのDO科学
瞳の色で、見え方も変わるの? 埼玉県・中山怜さん(高1)
からの質問


 ののちゃん 夏休みに見たい映画があるんだ。青い目をしたアメリカの女優さんが出ていてね。外国には、青い目の人が多いのかな。
 藤原先生 日本人も含めたアジア人に比べると、欧米に多い白人では青い目の人の割合が高いと言われているよ。アジア人では茶色が一般的だね。世界的にみると、緑や灰色、琥珀色の人もいるそうよ。
 のの へぇー。どうして、そんなにいろいろな色があるの?
 先生 色が違う部分は「虹彩」と呼ばれていて、ここにある色素のタイプや量で色が決まるの。たとえば、あるタイプの色素が多い人は濃い茶色っぽくなるし、逆に少ないと青くなる。色素のタイプや量は、親から子どもに受け継がれる遺伝子で決まるから、人種によって多い色があるのよ。
 のの それだけ目の色が違うと、見えるものの色も変わるのかな。
 先生 いいえ。色の見え方は変わらないよ。虹彩は輪っか上のシートで、私たちは、虹彩の真ん中に開いた穴から景色を見ているからね。この穴は「瞳孔」と呼ばれているよ。
 のの なぜ虹彩があるの?
 先生 伸び縮みをして、穴の大きさを調節するのよ。暗いところでは穴を大きめにして、明るいところでは穴を小さめにすることで、穴から入る光の量を調整するんだ。
 のの 入った光はどうなるの?
 先生 光は水晶体という部分を通って「網膜」に届くよ。網膜には、色を見分けるための3種類の「錐体細胞」と呼ばれる神経がある。それぞれ赤、緑、青を見たときによく反応するの。それぞれが脳に信号を送ることで、私たちは目の前の景色がわかるんだよ。
 のの すごいね。
 先生 ただ、生まれつきこの細胞の働きがほかの人と違うことで、色合いが違って見える人もいるよ。
 のの どういうこと?
 先生 赤を見たときによく反応するはずの細胞が、緑を見たときによく反応する人もいる。この影響で、赤と緑が似た色に見えて見分けにくい。逆に、緑によく反応する細胞が赤によく反応する人もいる。両方あわせると、日本人の男の人で20人に一人いると言われているよ。
 のの 色を見分けにくいと、困っちゃうこともあるのかな。
 先生 たとえば、赤と緑を見分けにくい人に取って、緑色の黒板に赤のチョークで書いた文字は、目立たないから読みにくい。でも、朱色っぽいチョークだと読みやすいんだ。こんな考えで、みんなが見分けやすい色を使う学校も増えてきている。同じように、地下鉄の路線図や地域のハザードマップなどの色使いやデザインを工夫する動きもあるよ。

 (取材協力=NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構副理事長の岡部正隆・東京慈恵会医科大学教授、構成=福地慶太郎)