2007年4月13日 神戸新聞

色覚もバルアフリー カラフル表示には理由がある

 神戸市バスに乗ると、車内の派手な色づかいに一瞬、目を奪われる。青いシートにオレンジ 色の握り棒、押しボタンは黄色だ。単純な配色だが、実は色弱者にも目立つよう工夫された新型車で、徐々に導入台数を増やしている。
 緑や赤などの識別が困難な先天的な色覚障害がある日本人は、男性で 20人に一人、女性では 500人に一人といわれる。緑内障などの疾患による障害を含めると、色弱者は全国で 500万人以上にものぼる。
 高度情報化社会を迎え、路線案内や新聞、雑誌の図解、看板広告など、微妙な色の違いを駆使したデザインは、一般的には分かりやすく便利だ。一方で、色の区別に苦労し、不便な生活を強いられている人は決して少なくない。
 誰にでも分かりやすい「ユニバーサルデザイン」への関心が高まるなか、氾濫する色使いを見直す公的機関や企業も現れ始めた。身近な「色覚バリアフリー社会」の取り組みを探してみた。
                                                (写真・記事 辰巳直之)

目立つ配色で
 手すりやボタンが目立つ神戸市バスの車内。一昨年度から国交省の配色規定を採用した。まだ545台中、60台のみだが、「安全面などで良い効果が出ている」と市交通局の担当者。5年後には、全車が色弱者にもやさしいノンステップのバリアフリー車両になる予定だ
=神戸市西区

案内に効果的
 広い公共施設では、目立つ色でゾーンを色分けし、案内に工夫を凝らすところも。ヴィッセル神戸のホームグラウンド、ホームズスタジアム神戸の観客席は、マリンブルーを基調に西側が紫、北側がオレンジ、東側が緑、南側が赤。大勢の来場者の移動をスムーズに促す
=神戸市兵庫区御崎町1

黒板見やすく
 色弱者には見えにくかった従来の赤(上)より彩度、明度を高め、 黒板に映える「朱赤」のチョーク。神奈川の専門業者「日本理 化学工業」の製品で、西宮市では今年から13の小学校に赤、黄色を導入した。ほかにも青、緑があり、昨年、全国で計50万本が販売されたという
=西宮市古川町、浜甲子園中

文字で補足も
 色の違いを区別に利用したデザインがはんらんするなか、文字や記号の併記を採用するメーカーも増えてきた。テレビのリモコンには、地上波デジタル放送開始にあわせ、操作ボタンに色名も漢字表記された。

数字はなに?
 色覚障害で最も多いのが、赤と緑の区別がつきにくいタイプ。「2」のように見えるパターン(パソコン画面)も補正眼鏡をかけると「9」と分かる。販売元のメガネメーカー社長・白井利明さんは「視力矯正と同じように一般の理解が深まり、日常生活の不便解消に役立てば」と話す=大阪市西区北堀江、株式会社ダルトン