日本眼科医会会報

文部省学校保健センター的事業 色覚小委、結論を保留「色覚は個人の感性」


 小文部省の学校保健センター的事業の一環である「児童生徒の目の健康に関する調査研究委員会」内において1994年に設立された「色覚小委員会」は、今年3月に「結論は一方向の見解に決定することは不可能」との保留の趣旨の報告を行い委員会活 動を終わらせた。
 「現在学校で行われている色覚検査は小学4年生一回のみ、しかし小学4年生の時の検査結果が中学・高校へとつながり、大学などの進路指導や将来の就職、結婚までの材料にされてしまうとしたら、その人の人生を大きく左右することになりますから、 非常に慎重に議論しなければならない問題です。結局、学校における色覚検査は、できる限り厳密な検査を行い、わずかでも異常の疑いのあるものについては配慮が必要と いう意見と、学校教育上、実際に配慮を必要とする人はごくわずかであり厳密な検査は不必要だとする二つの意見に大きく分かれてまとまらなかったというのが実情」と同小委員会の小委員長、小島靖郎・日本眼科医会常任理事は言う。
 同委員会のメンバーは、校医や校長、養護教諭、心理学者、それに色覚の専門家など十人で構成されていたが、問題は色覚異常を検出する必要があるのかどうか、行うならばどの検査表が適しているのか、また検査後の事後処置は具体的にどう行えばよいのか? など 、識 者の意見や考え方はそれぞれに違っていた。
 検査表は、主として石原式色覚異常検査表と東京医大式色覚異常検査表、そして
学校教育用に開発されたカラーメイトテスト(CMT)などを対象に検討した。従来一番多く使用されている石原式は医学的な精度は高いが、異常者がどういう色がわかないのかという判断は難しい。またCMTは、教育現場で教科書に使われている色を採用してどのような色の組み合わせの見分けが困難かを判断でき、事後措置を考えるのに役立つ。しかし、教育用色覚検査表であって医学的に色覚異常を検出する検査表ではない。
 「色覚は個人個人の感性の問題。今のところは個々の学校で、学校医と協議の上検査にあたっていただくことになります」と小島常任理事は話している。