2012年9月21日 産経新聞

色覚障害“直す”眼鏡 苦しんだ社長開発 「見る世界変わった」

 色覚障害がある人たちが日常生活で感じる不便さを解消しようと、大阪市内の眼鏡製造会社が色覚障害を補正する眼鏡レンズを開発、本格販売に乗り出して注目を集めている。国内では男性の20人に1人、女性の500人に1人に色覚障害があるとされるが、障害に気付かず成長するケースも増えているという。同社は「これまで不便さをあきらめていた人たちの可能性を広げられたら」と話している。

 この会社は大阪市中央区のネオ・ダルトン社。小学生から成人まで、色覚障害の悩みを抱えた人が訪れる。相談内容は「パソコンの画面の色が判別しにくい」「野菜の鮮度がわからない」などだ。

 国内で正常な見え方に近付く有効な補正レンズがなかったため、自身も色覚障害がある同社社長、足立公さん(57)が約20年前に開発に乗り出した。「地下鉄の路線図が判読できない」「車のスモールランプとブレーキランプの違いが分かりにくい」と日頃から不便を感じ続けていた。

 米国在住の日本人医師らの理論を基に、赤、青、緑の光の三原色の透過率をフィルターで調節する特殊レンズを採用。ミラータイプのサングラスのように光を反射することで目に入る光の量を調節し、正常なカラーバランスに近づけることに成功した。色覚障害者の約98%について補正が可能という。

 しばらくは知る人ぞ知る存在だったが、今年から本格販売に乗り出すことに。客のニーズに応えようと、さまざまなフレームデザインの眼鏡を用意し、ファッション性にも配慮した品ぞろえを心がけている。値段は7万円台が中心。

 色覚障害をめぐっては、平成15年度から、小学校での健康診断で義務づけられていた検査が廃止された。現在は任意での検査のみとなっており、色覚障害に気付かず成長し、後から自覚するケースも少なくないという。

 足立さんは「自分も補正眼鏡で世界が変わった。同じ悩みを持つ方に、ぜひ一度試していただきたい」と話している。