2018年10月1日 「社会教育」10月号

新連載 国内NPO研究 ケース(1)
色覚バリアフリーを目指して 特定非営利活動法人True Colors

放送大学教授 岩崎久美子

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1. True Colorsとは

 True Colors は、色覚弱者への理解と認識を深めるための啓発を行い、色覚バリアフリーの環境創りを目指す大阪に本部を置く非営利活動法人である。True Colorsとは、直訳すれば「本当の色」という意味である。この団体名は、人それぞれの色の見方が違う中で、一つの真実の色を追究するのではなく、多くの人が理解できる「あてはまる色」を考えるという意味で名づけられた。

 なぜこのような活動を始めたのか。代表の高橋紀子さんは、広告業界に勤務し、パンフレットやポスターの制作に長らく従事してきた。色はみんな同じに見えると思い制作指示を出していたが、色覚補正レンズで「生まれて初めて見た…色」と涙する人々に遭遇したことに衝撃を受け、「知った限りは啓蒙活動をしなければ!」とNPOを立ち上げたと言う。現在では、「色の見え方で悩む子ども達のサポートルームを作りたい」「多数派の子ども達も少数派の子ども達も、色の見え方が違って当たり前という文化を育てたい」という強い思い、そして「子どもが変われば文化は変わる、差別はなくなる」という考えから、学校を中心に研修や体験活動を行っている。会員は40名。この他、学校の先生など「True Colors応援団」と称する人々が随時事業に協力している。

 さて、ここでいう色覚弱者とはどういう人々であろうか。

 色覚弱者は、一部の色が判別できない。これは遺伝的に受け継がれるものである。男性や女性といった性別を規定する性染色体を考えてみよう。性染色体にはX染色体とY染色体がある。X染色体とY染色体があると男性に、X染色体を2本持つと女性になる。色覚異常の遺伝子はこのうちX染色体に存在する。この遺伝子があるX染色体とY染色体を持つ男性は色覚異常を発現し、このX染色体と正常のX染色体を持つ女性は色覚異常を発現しない。しかし遺伝的には保因者ということになる。

 このような色覚異常者の数は、公益社団法人日本眼科医協会によれば、男性の5%(20人に1人),女性の0.2%(500人に1人),その遺伝子の保因者は女性の10%(10人に1人)とされる。このことは、男女半々の40人クラスで言えば、男性1人が色覚弱者、女性の2人が保因者となる。つまり色覚弱者とは、ものの見え方において絶対的な色覚少数派ということなのだ。

 色覚弱者の人々は、それぞれ状況が異なるものの、その多くは、赤やピンクが見にくい、紫と青などの同系色が識別しにくい色の組み合わせがあると言われる。たとえば、実生活では、「桜の花は白い」「信号の赤と緑、赤と黄色がわかりにくい」「パソコンで色指定ができない」「薄い色の伝票の見分けができない」などの不便さがある。色覚についての状況はさまざまであるが、近視と同様、正しく状態を理解さえすれば対応することが可能であり、多くは生活上不便なく過ごすことができる。

 このような色覚の状況はどのようにしてわかるのか。