2015年12月17日 読売新聞

「人生案内」息子の色覚異常に責任感じる


 60代の主婦。息子の色覚異常に責任を感じています。
 息子は幼い頃から、鉄道に関係する仕事に就く夢を持ち、専門学校では頑張って首席になりました。しかし、鉄道会社の運転士・車掌採用試験では毎回、最終面接まで行くのですが、健康診断の色覚検査で引っかかり、不採用でした。
 一度は旅行会社に就職しましたが、夢を捨てきれず、今度は受験項目に色覚検査が書かれていない駅員だけの採用試験を受けました。順調に最終面接まで来たのですが、同じように色覚検査があり、本人は大変ショックを受けています。
 私の父が色覚異常で、私もその遺伝子を持っています。遺伝のために、息子が頑張っても夢が絶たれることに、申し訳ない気持ちでいっぱいです。息子は「母さんが悪いんじゃない。会社の仕組みが悪いんだ」と言って慰めてくれますが、ふびんでたまりません。
(大阪・A子)

 ご自分のせいで息子さんが夢をかなえられないと思っていらっしゃるのですね。どんなにつらい胸中かとお察しいたします。でもあなたに責任があるかといえば、それは違うと思います。
 息子さんの色覚に関する問題は遺伝的にはあなたに原因があるとしても、あなたにはどうしようもないことです。息子さんもそこはよく分かっています。失望のどん底にいてなお「母さんが悪いのではない」と言える息子さんはすばらしいです。そんな息子さんを育てたことに、あなたは胸を張るべきです。
 駅員の最終面接の結果は書かれていないので、色覚検査の結果を会社がどこまで重視するかは分かりません。不合格となったとき、息子さんが会社の対応を理不尽と恨み続けるのか、鉄道を愛する気持ちを大切にしながらも、活躍の場は別に求めるのか。後者を選択できるよう見守ってあげてほしいと思います。
 私たちは誰もがさまざまな課題を抱えています。どんなに努力をしてもかなえられないことがあります。それでも諦めず与えられたものに感謝して前を向いて生きるようにサポートしてあげることが、人生の先輩としての親の努めかもしれません。
大日向 雅美(大学教授)