2020年10月21日 読売新聞

何が見える?色覚Tシャツ 大阪のNPO企画 怪獣にも大波にも「障害ではなく個性 知って」


 左のイラスト、あなたは何に見えますか?ーー。人によって色の見え方が異なる「色覚多様性」について知ってもらおうと、大阪市のNPO法人「True Colors」が、イラスト入りTシャツを使った啓発プロジェクトを企画した。イラストは色覚の違いで見え方が二通りあり、名付けて「ダブルビジョンTシャツ」。様々な場面で着てもらい、認知度を高める狙いだ。実現に向け、同NPOはクラウドファンディングで資金を募っている。 (杉山弥生子)

 同NPOによると、先天性では、男性が約20人に1人、女性は約400人に1人の割合で、赤と緑など色の区別がつきにくい少数派がいる。長年、「色覚異常」と表現されてきたが、「異常」という言葉に違和感を持つ人もおり、日本遺伝子学会が2017年に表現を改めた。
 同NPOは11年に設立され、学校を中心に色覚多様性に関する講演活動を行ってきた。しかし、理解が広がらないため、今回のプロジェクトを企画した。
 Tシャツには、胸部分に赤や緑の点で描かれた大きな円をプリントする。多くの人は色の違いから、円の左下に緑の「怪獣」、赤と緑の区別がつきにくい少数派は色の明暗から「大波」が見える。英語で、「あなたは何が見えますか?」との言葉も添える。
 イラストは、同NPOから依頼を受けた大阪市のデザイナー・崎山霜一さん(71)が考案。葛飾北斎の浮世絵をヒントに、波の中に怪獣を重ねた。
 同NPOの高橋紀子理事長は「色の見え方は十人十色。障害ではなく、個性であることを知ってほしい」と話す。
 クラウドファンディングの目標金額は127万円。同NPOは、企画側と支援者をつなぐ仲介サイト「READYFOR」(https://readyfor.jp/projects/truecolorst-shutproject)で、30日まで寄付を募っている。Tシャツの市販は行わず、寄付者に返礼品として贈る。

「自分は少数派」知る機会少なく

 色覚が少数派かどうかは、今回のようなイラストを使った簡単な検査で判明する。
 かつては、学校で全児童に検査を実施していたが、「差別につながる」として、2003年度、学校の健康診断の必須項目から外れた。
 同NPOによると、少数派だと、パイロットや電車の運転士などの職業に就けないこともある。学校での検査がなくなったことで、自身が少数派だと知る機会がなく、企業の採用試験で初めて気づく人もいるという。
 文部科学省は14年、保護者の同意を得た上で、学校で検査するよう促す通知を出した。